今回はOfficial髭男dismの大ヒット曲、
映画『コンフィデンスマンJP』主題歌、
Pretenderを掘り下げていきたいと思います。
この曲には、曲をヒットさせる要素がふんだんに盛り込まれているなとつくづく感じました。
分析した後は、「そりゃ売れるわな!」って納得しちゃいましたからね。
それでは、一緒に見ていきましょう。
全体の曲構成
イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→サビ→後メロ→アウトロ
原曲キーはA♭メジャー。
印象的なギターリフから始まります。

このリフレインが曲を通して、ずっと鳴り続けています(ただしBメロは除く)。
このリフはペンタトニックスケールで構成されていて、
アジア的なテイストを感じさせます。
そして、こちらも王道です。
サビ前のワンフレーズ、「グッバイ」。
このフレーズによって、聴き手は「これからサビに入るんだなぁ」と期待することができます。
その後、聴き手が期待した以上のメロディックなサビがやってきます。
また、間奏ではシンセサイザーで、80年代頃を彷彿とさせる懐かしめの音色で展開していきます。
そして、後メロでは、コーラス隊がメロディを引っ張っていき、
最後にボーカルがソロフレーズ「とても綺麗だ」を言い放ちます。
その後、一度、無音となり、ピアノで例のリフレインを弾きます。
そこで、聴き手を余韻に浸らせるという、
見事に計算しつくされた、曲の構成になっています。
最初のギターリフが聴き手の頭の中にずっと残っていますから、
それを最後にピアノでもう一度、聴かされると余計にしみじみとしてしまいます。
コード進行
この曲では、借用和音が和音が多く使われています。

借用和音とは、その曲のキーに含まれない和音を他のキーから借用してきた和音のことです。
上記のメロディを見てもらうとわかりますが、
原曲キーA♭にはない音、ミを使っている部分がありますね。
C7の構成音はド、ミ、ソ、シ♭となっていますから、ここにもミが含まれています。
このようにキーに含まれない音を使うことで、
単調なメロディの繰り返しパターンに変化をつけることができます。
つづいて、パッシングディミニッシュです。

FmからD♭maj7まで半音でつながっていることがわかります。
とてもなめらかで、聴き手からすると気持ち良さを感じられますよね。
リズム
16ビートのリズムで進行していきます。
印象的なのはBメロのリズムです。
シンコペーションが使われています。
シンコペーションとは、本来のリズム進行から外れることをいいます。
AメロからBメロに変わると急にリズムが変ります。
たとえば、Aメロでは、
メロディとバッキングの入るタイミングが半拍ずれていました。
一方、Bメロでは、メロディとバッキングの
入るタイミングが同時になっています。
また、リズムがより複雑になり、アクセントも変化していきます。
そして、ピアノの跳ねるようなリズム(スタッカート)が印象的です。
サビに入る前の序章として、とても重要な役割を果たしています。
それにしても、イントロからのリフレインと、このシンコペーションは、
とてもキャッチーですよね。
キャッチー過ぎて、頭の中でずっとヘビロテしてしまいます。
歌詞
この曲は、男性の視点で恋ごころを歌ったラブソングです。
ここでは、その歌詞にフォーカスしていきたいと思います。
簡単に関係に名前を付けられる歌詞にしたくなかった
ボーカルの藤原聡さんはつぎの記事でこのように語っていました。

確かに「もっと違う設定で 」とか、「もっと違う価値観で」とか
いろんな人たちの関係性に当てはまり、
歌詞に普遍性を持たせていますね。
ちなみに、Pretenderという曲名には「ふりをする人」、「詐称者」という意味があって、
そこには解釈の余地を残しておきたかったのだそうです。
また、「ラブストーリー」、「いつも通り」、「アイムソーリー」、「予想通り」など、
韻も素晴らしく自然に踏んでいて、
言葉のもつ響きの美しさをより引き立たせていると感じました。
まとめ
・曲中に繰り返し鳴っているリフレインで印象づけ
・借用和音で変化を演出
・パッシングディミニッシュでなめらかさなコードの進行を実現
・シンコペーションで曲全体に抑揚をつけている
・「グッバイ」や「とても綺麗だ」などのフレーズを効果的に目立たせている
・歌詞にどんな関係にも当てはまる普遍性をこめている
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